離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

 わたしの疑念が確信に変わった。彼はわたしと本当の夫婦になるつもりはないということだろう。

 夫婦にとって大切な一夜。その夜になんの説明もなくわたしをひとりにしたことがなによりの証拠だ。

「そっかぁ、そういうことかぁ」

 彼がわたしとの結婚を決めたのが妙に早かったのは気になっていた。

でも、わたしもお見合いの日に慶次さんのことを「いいな」と思ったから、きっと彼もわたしのことを妻にしてもいいくらいの気持ちではいてくれるものだと勘違いしていた。

 でもそれは、妻は妻でも〝おかざりの妻〟。祖父の頼みだから断れなかったんだろう。

 お見合いから帰った後、わたしは祖父と慶次さんの関係を聞いた。

 今から数年前。慶次さんが立ち上げたテックコントラクトは取引先の大手の銀行が破綻し、そのあおりを受けて一時的に資金繰りに困ったことがあった。その時に手助けをしたのが祖父だというのだ。

 それ以来、盆暮れだけにとどまらず、なにかあるたびに彼は祖父への挨拶をかかさなかった。


能力もさることながら、そういう律儀なところも祖父は高く評価して、わたしの結婚相手の候補として彼を選んだのだ。

 そしてそんな律儀な彼は、死期が間近に迫った祖父の「孫をひとりにしたくない」という願いを聞き入れただけにすぎない。それに……わたしには白木の孫というだけで価値がある。

だからこそ祖父は自分の目の黒いうちにわたしの伴侶(はんりょ)を探すことにしたのだ。
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