離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「それはまあ、一緒に暮らしてるから」

 好きな人のことだから、とは言えない。

「そっか、さすが奥さん」

 にっこり笑う慶次さんの顔を見て、少し落ち込む。

 奥さんかぁ。彼はわたしのこと奥さんって思ってるってことだよね。

 夫婦には色々あるってわかっているけれど、わたしたちもこれが正しい夫婦の形なのだろうか。

 わたしが考え事をしている間に、慶次さんはさっさと食事と出勤準備を済ませてしまった。

「じゃあ、行ってくるよ」

「はい」

 いけない、ぼーっとしている場合じゃなかった。朝のこのひと時が唯一妻らしくいられる時なのに。

 慌てて玄関に彼を見送りにいく。

「いってらっしゃい」

「ああ。今週末は白木さんのところに行くんだったな。休みがとれそうだから俺も一緒に行く」

 いつも忙しそうで本来休みである週末でさえ仕事に行くこともあるが、休みをとってくれるようだ。

「ありがとう、おじいちゃんも喜ぶよ」

「俺にとっても大切な人だからな。気にしないで」

 結婚してから忙しくても都合をつけて、たびたび祖父のところには一緒に行ってくれていた。わたしだけでなく祖父のことも大切にしてくれる。

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