離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「少し落ち着いて。水でも飲もう」
「さっき飲んだよ」
「いや、でも、もう少し……」
彼は必死に離れようとしている。それがわかったわたしの心の中でなにかがぽっきり折れてしまう。
ここまでしても……伝わらないなら。もう無理なのかも。
これ以上意地を張っていても仕方ない。彼にその気がないことだけはしっかりと伝わった。それまで力を込めていた腕をだらりとさせる。泣き出してしまいそうなのを必死になって我慢した。
「和歌?」
慶次さんがわたしの顔を覗こうとする。けれどこんな今にも泣きだしそうな顔、絶対に見られたくない。
「ごめんね。飲みすぎたみたい。寝るね」
彼の方を一切見ないで、そのまま勢いよく布団の中にもぐりこんだ。芋虫のように体を縮めて、みじめな自分にどうにかして耐えた。
「体調悪くなったら言って。おやすみ」
優しい言葉をかけて彼が部屋を出る。やっと体の力を抜くことができ、はぁと息を吐いた途端、涙があふれた。
精いっぱいの行動だった。きっと彼にも意図は伝わっていたに違いない。それでも彼は拒否したのだ。
結局わたしって彼のなんなんだろう。
そもそも好きだと言われていないのに、勘違いしてしまったのが悪いの? でも結婚を決意して優しくしてくれているなら、わたしのことが嫌いじゃないって思うのが普通だ。
そこでわたしはうすうす感じていた考えが結論だと答えを出した。
彼はわたしを女としては見ていないんだ。
ずっと前から考えていた。けれどそれを認めたくなかっただけ。でもここまで拒否されたらいくら鈍いわたしでも理解できる。
振り絞った勇気を踏みにじられたと、ベッドの中で声を押し殺して泣いた。
もうこれ以上、なにをどうすればいいのか。わからない。