離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く


 翌日。

 飲みすぎと泣きすぎで頭が痛い。瞼も腫れているのが感覚でわかる。

「最悪」

 声を出すと頭に痛みが広がる。当分お酒は控えるようにしよう。

 ノックの音が聞こえたが、返事をしなかった。彼にどう顔を合わせればいいのか、わからなかったから。

「入るぞ」

 えっ?

 今までわたしの部屋に無断で入ったことなんてなかったのに。一気に緊張が走る。絶対に昨日の話をされる!

「薬、ここに置いておくから」

 彼がベッドの縁に座って、布団から出ている後頭部を優しく撫でた。

「……ありがとう」

 本当は顔を見て言うべきだとわかっているけれど、今のひどい顔を彼に見られるわけにはいかない。

「和歌、昨日部屋に帰ってきてからのことは覚えてる?」

 しっかりはっきり覚えている。けれどわたしは頭を振って否定した。あんな恥ずかしいこと、全部全部なかったことにしたい。

「そっか。まあ、かなり酔っていたからな」

 彼が納得してくれたみたいでホッとした。

「春から社会人なんだから、お酒の飲み方も覚えていこうな。今度バーでデートしようか」

 今のわたしにデートっていう単語は痛すぎる。

 わたしが返事をしないままでいると、彼はベッドから立ち上がった。

「じゃあ、仕事に行くから。今日は家事とか無理せずにゆっくり休んで」

 優しい言葉をかけた彼は、仕事に向かった。

 気配がなくなったのを感じてから、布団から出る。ベッドサイドのチェストには薬とミネラルウォーターが置かれている。

 わたしはそれを手に取り、一気に薬を流し込んだ。ごくりと飲み込んだ後、なんだかすごく切なくなる。

 わたしのことが嫌いなら突き放してくれればいいのに。中途半端に優しいなんてそんなのずるいよ。
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