離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
急に訪れたわたしを祖父は歓迎してくれたのだけれど……。
「ねぇ、おじいちゃん。遠出して大丈夫なの?」
「ああ、このくらい平気だ。今度はいつ和歌と出かけられるかわからないからな」
祖父はわたしの旅行がキャンセルになったことを知った途端、日帰り旅行の手配をし始めた。鶴のひと声のごとくすぐに行先が決まり、運転手つきの車であっという間に出発した。
すぐに高速道路に乗り、一時間ほど走った。書道が趣味の祖父の希望で、まずは美術館で行われている書道展に向かい、次いで近くの神社でお参りを済ませた。
その後、祖父が祖母とよく訪れていた旅館で少し早い夕食をとり、庭をふたりで歩く。
「おじいちゃん、久しぶりだね。一緒にこんなに長い時間過ごすの」
「ああ、そうだな。結婚して和歌はすっかり奥さまだな」
「そう? そう見えたならよかった」
口にして、まずかったなと思う。含みのある言い方をしてしまった。
「……なにかあったのか」
祖父にはすぐにばれたようだ。心配をかけないためにもなんとかごまかさなくてはいけない。
「ううん、なにかがあったわけじゃないの。でも夫婦って難しいね」
笑みを浮かべたけれど、あまりうまくいかなかった。でも嘘はついていない。〝なにかがあった〟わけではないのだから。