離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「そうか、そうか。まだ日が浅い。これからだろう」
祖父が少し遠くを見つめて目を細めた。
「半ば強引に話を進めたのは儂もわかっているつもりだ。もし、本当につらくて仕方ないなら、戻っておいで。まだ神さまが儂に与えてくれた時間は残っている」
祖父はそう言うけれど、最近薬の量が増えた。昔ほど気力もないようで、大好きだった囲碁も今ではほとんどしていないと、家政婦から聞いている。
「おじいちゃん」
慶次さんとの結婚を勧めたのも、こうやってダメなら帰ってこいと言ってくれるのも、すべてわたしのためを思ってだ。
慶次さんとのことは他の人では解決できない。わたしと彼だけが現状を打破することができる。それなのに、わたしは肝心なことが聞けずに落ち込むばかり。
「わたしたち、これから……だよね」
「そうだ。長い夫婦人生を考えれば、始まったばかりだろう」
「そうだよね」
祖父は優しい笑顔をわたしに向けた。優しさに勇気をもらう。
慶次さんときちんと話をしよう。それからふたりで答えを出せばいい。きっと彼は話を聞いてくれる。今までだって逃げてきたのはわたしだ。知りたいことがあるなら、ちゃんと立ち向かわなくてはならない。
祖父にそっと腕を絡めた。なんだかものすごく久しぶりな気がする。昔に比べて痩せてしまった祖父。でも優しさは変わらない。祖父がわたしにくれた慶次さんとの縁を大切にしなきゃ。わたしと慶次さんが仲良くすることが、きっと祖父に対する孝行になる。
わたしは気持ちを新たにして前に進む決意をした。