離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
彼が部屋に女性を連れてきたことに衝撃を受ける。もしかして今日わたしがいないことを見越して連れてきたのだろうか。
いや、悪いふうに考えるのはやめなきゃ。そうしなければわたしたちの関係は前に進められない。
なんとか前向きに気持ちを立て直そうとした時、ふたりの会話がより鮮明に耳に入ってきた。
「もう、社長ったら大丈夫ですか?」
声と会話の感じから、女性は慶次さんの秘書の七尾(ななお)さんだ。わたしたちの結婚を知っている少ない人物のひとり。
会社での彼の身の回りのことはもちろん、冠婚葬祭などプライベートと仕事の区別がつかないものなど、公私にわたって彼のスケジュールの管理をしている。おそらくわたしよりもずっと長い間彼のそばにいる女性。
「悪い。七尾」
「そう思うならいい加減、奥さまのことどうにかしてください」
自分の話題が出て緊張が増す。慶次さんがわたしに対する本音を今、語ろうとしている。盗み聞きがよくないのはわかっているけれど、こんなチャンス逃すわけにはいかない。
わたしはその場で音を立てずに、耳をそばだてた。