離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く


 そして誕生日の当日。わたしはレストランの前で彼の到着を待っていた。去年とはまったく別の気持ちで。

 別れると決めたのはわたし。幸せだったらこんな選択はしないはずなのに、思い出すのは彼と過ごした楽しかったこと。たった一年半。

 本当の夫婦とは言えないふたりだったけれど、それでも楽しいことがたくさんあった。離婚する時ってもっと嫌いになって憎しみ合ってお互いに傷つけながらするものだと思っていた。

 けれどわたしの中に浮かんでくる彼に対する思いは「やっぱり好きだ」というシンプルなものだ。

 できればそばにいて、少しでも好きになってもらえる努力をしたかった。でもそれは彼に好きな人がいない場合だ。彼の気持ちがわずかもわたしにないのなら、彼の恋を応援してあげるべき。それがなにも持っていないわたしが彼にできる最後の恩返しのようなものだ。

 わたしが覚悟を決めた頃、タイミングを見計らったかのように目の前に彼の会社の車が止まった。すると彼がすぐに降りてきた。

 たった四日ぶりだけれど、彼がいつもよりもカッコよく見える。終わりが近づいているからそう思うのかもしれない。ふと彼の後ろに視線を移すと、七尾さんが座っていた。

 会社の車の後部座席。慶次さんの秘書である七尾さんがいてもなにもおかしくない。いつもならなんにも感じないその事実が、今のわたしに与える衝撃は大きい。

 でもこんな気持ちになるのもあと少しの間。わたしは痛む胸を抑えて、笑顔でわたしに向かって手を上げた彼に微笑みかけた。
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