離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
このレストランの食事は美味しい。だけど今日だけはまったく味がわからなかった。ものすごく緊張していたからだ。
「和歌、どうかした? 具合悪い?」
「え、ううん。大丈夫だよ」
「だったらいいけど、旅行で疲れた?」
慶次さんはわたしが沖縄に行ったと思っている。だからこそ家に帰らずに、これからのことをじっくり考えて祖父に相談することもできた。
「もうすぐデザートだし食べたら早めに家に帰ろう。話したいことがあるんだ」
慶次さんも?
会話を中断するようにデザートが運ばれてきた。しかしわたしは彼の『話したいことがある』という言葉に意識を持っていかれた。
慶次さんも別れ話をするつもりなんだ。七尾さんのために『早くなんとかする』って言っていたもの。
彼からそんな話を聞くなんてつらすぎる。わたしはワガママだとは思ったけれど、別れぐらいは自分から切り出したいと思い、口を開いた。
「待って、わたしも先に話しておきたいことがあるの」
「うん、どうかした? デザート食べてからにする? 和歌の好きな――」
「離婚しましょう」
わたしは慶次さんが話をしているにもかかわらず、勢いでそう切り出した。
彼は一瞬目を見開いた後、眉間にしわを寄せた。
「え? どういうこと。俺の聞き間違いか」
きっと彼にとっては寝耳に水の話だろう。まさかわたしから離婚を切り出されるだなんて。