離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く


* * *

 目の前で起こっている事実が信じられない。いまだかつてこんなに動揺したことはなかった。いつだって冷静に状況を判断できる。そう自負していたけれど、今回ばかりはなぜこんなことになってしまったのかわからない。

 離婚だと?

 和歌の様子を見ると真剣そのものだ。そもそも彼女はこの手の悪趣味ないたずらをするような子じゃない。であれば彼女は俺と離婚したいと間違いなく言っている。

『どうして? 理由は?』そう聞きたい衝動に駆られる。今までそんな気配なんてなかったんだからあたり前だろう。それでも俺がそれをできなかったのは、和歌の目に涙がいっぱいたまっていたからだ。

 きっと彼女は我慢できていると思っているに違いない。けれど俺からは今にも泣き出しそうになっているのがわかる。

 なぜ?という疑問しか湧いてこない。

 俺なりに大切にしてきたつもりだ。しすぎるくらいだと周りからも言われていた。でも決してそれが間違いだったとは思わない。それくらい俺にとっては大切な存在だったから。

 だからこそ、彼女を泣かせるわけにはいかない。

 でもそうすると、今ここで理由を聞き出すことはできなくなる。いったん彼女の思う通りにするべきなのか。

 迷った末、とりあえずこの場を納めるために俺は「わかった」と返事をした。

 しかしその瞬間、和歌が苦しそうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。きっとなにかこの離婚を言い出したのには、行き違いがある。そんな気がしてならない。

 和歌のつらそうな表情に俺は一縷(いちる)の望みをかけた。振られたのにしつこいと思われるかもしれない。しかしそれでも俺は彼女を手放すわけにはいかないんだ。

 さてどうするか……。
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