幸せな呪い

「あはは、嘘はつけないタイプと見た。資格のためにここへ来たんでしょう?」

図星だ。

でも素直にそれを認める訳にはいかないので、就職課で言われた言葉をそのまま使ってみることにした。

「……人生の選択肢を増やすため、です」

「ああ、なるほど。ベターな答えだね。でも、ここでは一応嘘でもいいから『障がいをもつ人と共に誰もが安心して生活できる社会の実現を目指して、特別支援学校の先生になりたいと思いました』みたいなことを言っておくといいよ」

「そう……ですね。勉強になります。ありがとうございます」

こういう実習先では、大事な我が子を資格取得のためだけに利用されたくない、と考える保護者も多いのだろう。これからは気をつけなくては。

頭を下げて男性の方を見ると、笑顔を浮かべたままだったので少しほっとした。
男性は男の子の指先から繋がった機械を一瞬確認して、頭を撫でる。
小さな声で「大丈夫だね」と言ってから、こちらに向き直る。

「この子は今年中一になった佐々木登也《ささきとうや》で、僕は父親です」

この見た目が小学校低学年の子が中学生?

そんなことを一瞬考えてしまった。
とうや君のお父さんの顔が曇る。
この全てが顔に出てしまう自分の特性を何とかしたい!

「えっと、私、何もかも初めてで、とうや君のように医療的ケアが必要なお子さんを見たのも初めてです……」
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