夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
3章

年を跨いだ千堂製薬の会見の日から数日経った平日。夕飯を食べ終えた時間帯の久世家の応接室に、久世家全員と向かい合う理玖がいた。

「本日より、久世 正様の元で勉強させていただきます、千堂 理玖でございます。若輩者の為、不勉強な部分もありますが、久世家の当主になるべく精進してまいります。そして亜梨沙さんの良き夫になるつもりでいます。久世家の後継者に認められた時には結婚を許して頂けないでしょうか?」

「あははは…理玖よ。何を焦っておる。亜梨沙が驚いておるぞ」

「プロポーズはまだですが、先に僕の覚悟を知って頂きたいだけです」

「認めるもなにも、後継者に選ばれた誰かが亜梨沙の夫になるのだから、理玖くんだろうが他の誰かだろうがその時は認めるよ。亜梨沙と結婚したいなら、お父さんに認めれるしかないよ。君がうちの亜梨沙をどんなに愛していても、後継者の器じゃないなら、諦めてもらうしかない。まぁ、頑張って、君しだいだから」

「素直じゃないの…」

「そうですね」

祖父と母が、強がる父を憐れみの目で見ていた。

「ありがとうございます。その際、改めてご挨拶させていただきます。亜梨沙さんと少しお話しする時間を頂けないでしょうか?」

「…」

父の代わりににこやかに母が答える。
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