夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「あら、そうね。亜梨沙、理玖くんのお部屋に案内してあげなさい」
「はい」
昨日、突然祖父の命により、使われていない空き部屋を掃除させられたのだ。
母屋から渡り廊下を挟んだ離れ部屋。昔は、客室として使われていたらしいのだけど、祖母が亡くなり使われなくなった部屋だった。
古い家なのであちこちとガタはきていたが、新しい畳が入り、障子も張り替え綺麗になった部屋に理玖を案内する。
「何も聞いていないんだけど」
「言ってないからな」
じろっと睨んでやるが、理玖は気づかずに冒険する子供のような目で、あちこちに興味深々で歩いていた。
「ここ使って。浴室とトイレはそのドアの向こうにあるわ」
「いいね。昔ながらの離れ部屋か。亜梨沙とイチャイチャしても気づかれない」
理玖の腕の中に囲われ、見上げた。
「私、怒ってるんだけど」
「うん、知ってる」
拳を作り、理玖の胸を叩いた。
「ごめんな。ちゃんと話をしたかったけど、引き継ぎや、引っ越しの手続きで忙しくしてたんだ」
「お爺さまとは連絡できても、私とは出来なかった?」
「お前の携帯番号知らないし、久世家に電話しても最終的に親父さんに切られてたな」
「えっ、うそ。ごめんなさい」