夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

「あら、そうね。亜梨沙、理玖くんのお部屋に案内してあげなさい」

「はい」

昨日、突然祖父の命により、使われていない空き部屋を掃除させられたのだ。

母屋から渡り廊下を挟んだ離れ部屋。昔は、客室として使われていたらしいのだけど、祖母が亡くなり使われなくなった部屋だった。

古い家なのであちこちとガタはきていたが、新しい畳が入り、障子も張り替え綺麗になった部屋に理玖を案内する。

「何も聞いていないんだけど」

「言ってないからな」

じろっと睨んでやるが、理玖は気づかずに冒険する子供のような目で、あちこちに興味深々で歩いていた。

「ここ使って。浴室とトイレはそのドアの向こうにあるわ」

「いいね。昔ながらの離れ部屋か。亜梨沙とイチャイチャしても気づかれない」

理玖の腕の中に囲われ、見上げた。

「私、怒ってるんだけど」

「うん、知ってる」

拳を作り、理玖の胸を叩いた。

「ごめんな。ちゃんと話をしたかったけど、引き継ぎや、引っ越しの手続きで忙しくしてたんだ」

「お爺さまとは連絡できても、私とは出来なかった?」

「お前の携帯番号知らないし、久世家に電話しても最終的に親父さんに切られてたな」

「えっ、うそ。ごめんなさい」
< 106 / 168 >

この作品をシェア

pagetop