夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「…聞こえたけど、…娘と彼氏の生めいた会話なんて聞きたくなかったよ」
寂しげに影を落とす表情で見つめてくる父親に、どこから聞かれていた?と恥ずかしくなるものの、聞かなかったことにする。
「大丈夫だよ。あーなった理玖は強いよ。きっと」
「お父さんも彼を認めているんだ。結果は決まっているんだろうな」
ぶつぶつとひとりごちる父を置いて、母屋に足を動かした足取りは、好きな人と同じ屋根の下で暮らす生活に浮かれスキップするように軽やかだった。
だったのに…
思っていたのと違う。
お爺さまから確かに、理玖にはあちこちに出向いてもらうっていう話は聞いてはいたけど、翌日の午後からもう久世の家にいないって…酷すぎる。
朝、座卓を囲んで家族と一緒に朝食をとった際、隣の上座に座ってもらったが、親の目もあるからとおはようの挨拶とちょっとした会話。
「寝れた?」
「…まぁな」
ごまかすように頭を掻く理玖を、ジト目で見上げたら、耳元に顔を寄せてきて小声で『我慢できない…誰かに襲われるかもって思ったら、寝つけなかった』
ゾクリと甘く痺れる体。そして、私の反応に気をよくしてニヤッと笑うものだから、『バカ』と、理玖の肩を突き飛ばしたが、びくともしないのが悔しい。