夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「それはそれは、いい経験になったでしょうよ」
彼が今まで女性にモテる人生を送ってきた事を確認させられた瞬間で、つい、可愛くない事を言っていた。
「なに怒ってるだ?」
「怒ってない。ただ、比べられるのはイヤなの」
まさか、女の影がチラつくことに腹を立てている理由に、自分自身困惑している。
「そんなつもりはなかった。俺の外見に媚び売る女しか知らなかったから、新鮮だったって事だ」
最後に、彼が照れた口調で自慢話を閉めたところで食堂に着き、その話題は終了したが、なぜだか私の心は複雑なままだった。
食堂の品数はそう多くないが、注文方式らしく、既に何組か並んで待っていた。
私達も、トレイを持ちカウンターに並んでいると、キッチン側にいる真耶さんが気づき、ご主人を呼んでいた。
「あなた…松浦さん来られたわよ」
忙しい最中にもかかわらず、手を止めてわざわざカウンター前まで来られた男性は、にこやかに笑う。
「先程は、出ていて挨拶できずに申し訳なかったね。ここのオーナーをしている日暮です。後で、またご挨拶させてもらうよ。とりあえず、僕の手料理をお腹いっぱい食べてて」
そして、また奥へ戻り、鍋を振っている姿が見えた。
「なんにする?」
黒板に書いてある、今日のメニューとなるお品書きに、頭を悩ませる私。