夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

「久世家って、そんな凄いお家なの?」

「亜梨沙には話してなかったね。お父さんが生まれ育った久世家は、天皇家と並ぶ歴史ある名家なんだ。日本の表舞台は天皇家、裏で久世家が日本を支えてきたと言ってもいい。戦後、この国が敗戦国でありながら、他の敗戦国より発展して来れたのは久世家が今まで政財界に援助と助言をしてきたからだよ」

予想外過ぎる凄さに言葉が出てこないで、あ然と聞いていた。

「跡継ぎのお前が出ていかなければ、また違っただろうが、状況が変わったのだ」

「お父さん、僕の性質では久世家の当主は務まりませんでした」

「そんなものわかっておったわい。だから、家を出ることを黙認したのだろう。お前に息子がいれば、わしが後継者の資質があるか見極め育てるつもりでいたが、娘しかいない。普通の娘として育ったこの子には、政財界の曲者どもと対峙するのは難しかろう」

「そうですね。親族の中にはいなのですか?」

「いたらここには来とらん。久世の当主が浅愚ではならんのだ。慧眼と先見の明を持つ器、それに加えて上に立つ才を持った強者でなければ務まらん。親族連中を黙らせる奴ではならんのだ」
< 2 / 168 >

この作品をシェア

pagetop