夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

「だったら尚更、普通の家庭で育った亜梨沙に、久世は重すぎます。お父さんが選んだ方を亜梨沙の婿に取ると言うなら、その方をお父さんの養子に取られたらどうですか?」

「わしとて、孫娘に久世を背負わせるのは忍びない。だが、久世の血筋を絶やす訳にもいかんのだ。だからといって親族の娘を養女にすれば、後々、禍根を残す。無理を承知で言っている。わしが選んだ婿候補の中から気に入ったものを伴侶に選び、久世を継いでくれぬか?」

「突然来て、祖父だと名乗り、突拍子もない話をして、養女になって婿を取れって…初対面で言うこと?血筋だとか、久世だとか、私にはどうでもいい。跡継ぎがいないなら、あなたの代で終わればいいじゃない」

祖父と孫の感動の対面もなく、ドラマや小説で見る影の大物的な家の跡を継げと言われ、普通に育った私にはありえない内容の話だ。

「な、なにを言うか⁈わしの代で潰えたら、ご先祖様に顔向けできんわい」

「あの世で、ご先祖様に怒られればいいのよ。私は継がないし、婿を取るのもお断り」

ふんと怒り任せに顔を背けた。両親は、顔を見合わせ困惑していた。

憤慨し顔を真っ赤にさせていた祖父の顔が青白くなり、突然口をパクパクとさせた後、急に胸を押さえて苦しみだした。
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