夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
オーナー夫婦が、自宅から地元酒とつまみを用意して上がってきたらしく、背後から声がする。
「あら、仲良しね」
嫌味のない含みのある笑い声に、ばっと背後の気配が消えた。
「ガキみたいにはしゃいで危なっかしいからだよ」
「そうね。落ちたら大変だものね」
揶揄う真耶さんと照れを隠す2人の掛け合いに、オーナーも加わる。
「惚れたか?」
「ちがうわ」
即座に否定されて傷ついている私がいた。
「亜梨沙ちゃん、こっちへいらっしゃい」
「はーい」
何気ないふうを装うが、空いてる席は彼の隣だった。
肘同士がぶつかりそうな距離で彼が動く度に意識するのは、どうしてだろう?
きっと、先程の突然の接触のせいだ。
それしか考えられない。
隣なんて気にならないように、オーナーの話に集中しようと、全神経をオーナー夫婦に向けた。
「松浦とは高校からの付き合いで、一番気が合う奴だったんだ。だから、当時は、松浦の嫁さんと俺とこいつとでよくダブルデートしてたよな」
「そうね…百合ちゃん一筋で、他の女の子なんて眼中になかったのよ」
「2人が駆け落ちした時は、やっぱりかって思った。婿にまでなるなんて思わなかったけど、その時には、松浦は妊娠してた。松浦が3人もいてややこしいな。亜梨沙ちゃんって呼んでいいか?」