夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「あっ、はい」
「なら、俺も亜梨沙って呼ぶ。堅苦しくて話難かったからな」
「えー、許可してない」
「俺だけ仲間はずれかよ。特別に理玖って呼ばせてやるから、いいだろう?」
内心、なぜだか嬉しくてにやけている私は、考えるふりをした。
「なぁ…ここにいる間、お互いの時間が合えば、住民しか知らない場所に連れてってやるからさ…お互い、名前で呼びあおうぜ」
「絶対だよ。日暮さん夫婦が証人だからね」
「理玖…必死だなぁ」
「うるさい」
「理玖…のせいで話がそれたけど、うちの両親、駆け落ち婚だったこと、初めて知りました」
「まぁ、当時は家を出るかで、あいつも悩んでたよ。あいつの家って特殊だから仕方ない事なんだけど…まぁ、あいつに感化されて俺らも駆け落ち婚ってやつだ」
あはははと豪快に笑うオーナーと、隣でにこやかに当時を思い出しいるだろう真耶さんは、頷いていた。
「俺ら夫婦は、子供に恵まれなかったけど、甥っ子が大人になってから毎年、顔を出す。毎年、来るのはいいんだが、繁忙期に長期滞在して困る」
「繁忙期だから、手伝ってるだろう」
心外だというように、そっぽを向いてしまった理玖を、オーナー夫婦は、愛しそうに見つめている。
「甥っ子って、理玖ですか?」