夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
被災地に、救援物資はもちろん支援物資、人員を動員したのだ。
もちろん、その後の支援も惜しみなく出す祖父に、久世家の役割を教えられた気がした。
その後、怒涛の日々を過ごすことになる。
祖父とマンツーマンで約100人分の政財界の重鎮の顔と名前が一致するまで、何度も叱られ覚えこまされた。
習い事も再開され、マナースクールでは、上流階級での会話の裏読みを勉強させられるが、難しく、とうとう場数をこなして会話なれするしか無いと匙を投げられてしまう。
それと、気をつけていたが、島の日差しが肌や髪に結構なダメージを与えていたらしく、美容部員により徹底管理されることになる。
お披露目日の当日、会場の控室に、この日の為に用意された最高級の着物は、総絞りの振袖だった。
裾に大きな牡丹、扇面などに四季の花々を贅沢を盛り込み、白と淡い水色のコントラストに、藤の花の紫色が鮮明で美しい。
西陣織の帯は、柔らかい黄色に鳳凰の柄があしらわれ、人間国宝だという方の作品らしい。
着物の価値を知らない私が、袖を通すのも憚れる一品物。
「着なきゃダメ?」
もう、ドレスでいいじゃんと叫んでも、久世の跡継ぎとして…云々とお説教を食らう。
もう、汚れても知らないからと、恐る恐る袖を通し、呉服のスペシャリストによって着付けられていった。