夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

着物に合うよう、清楚に結いあげられた髪に、牡丹のかんざしを一つ。

はぁ…かんざしも高級品だろう。

中身は普通の私。
いったい、総額いくらで着飾れて、うわべを飾っているのだろうか?

考えるのも恐ろしい。

父も母も私ほどではないが、久世家として恥ずかしくない程度での身なりを整えている。

祖父は、まぁ、久世の当主らしく貫禄ある羽織袴姿。

「さぁ、皆が待っておるぞ」

既に会場入りしている招待客、政財界の要人からその家族、総勢500人が待つ大広間へ移動した。

「100人じゃなかったの?」

「何を言っとる。主要人物が100人じゃ」

「500人の招待客でしょう?」

「たかだか、500人に何をびびっとる。本来ならその倍は招待するはずじゃったわ。それを半分にして顔見せ程度にしたのは、婚約者候補と顔合わせもあるからじゃ。婚約したあかつきには、盛大に久世家の次期当主のお披露目をするからの。お前は、その隣で恥じないよう、場慣れすることじゃ」

人が多いと、挨拶などで本来の目的が損なわれるかららしい。

それでも、500人だ。

愛想笑いがいつまでもつだろうか?

会場入りする前に、固まった口角をほぐした。
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