夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

理玖に、愛する人がいるのだとショックを受け、顔が強張る。

前で重ねた手をぎゅっと握り、胸の痛みを我慢している私を、まだ、理玖の目が射竦めている。

愛する人の為に、島でのことを蒸し返されたくないから睨んでいるのだろうか…

「ところで爺さん、俺に、自己紹介をさせる気がないのか?」

「したいのか?久世になど興味がないのだろう⁈」

ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべるお爺さまに、理玖は舌打ちした。

「えぇ、可愛らしい方なので、ご挨拶させてください。初めまして、久世 亜梨沙さん。私は、千堂 理玖です。本日、このような形でご挨拶させていただいてますが、どこかで私達、お会いしていませんか?」

ごくりと生唾を飲み込んだ。
私だと絶対わかっているのに、何を言わせないのだろう…

「理玖よ。孫娘が可愛いからと惜しくなったか?わしの前で口説くとは、太々しいの…ワハハ」

「えぇ、陳腐な口説き文句ですね」

理玖を挑発するかのように、千秋様は祖父に続いて話し始めた。

「亜梨沙さん、意中の方がいないのであれば、今度、お時間を作って頂けませんか?」

理玖に、お手本を見せるかのような突然のアプローチに、祖父は満足顔をする。

社交辞令なのだろうとわかっているが、私を見て、目が据わっている理玖を前にしたら、なんと答えていいかと頭を悩ませていた。
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