夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました

碓氷 千秋さま
本筋ではない親戚筋からのあの若さで、千堂製薬の常務までなった方だ。浅愚ではないだろう。慧眼と先見の明を持ち、それに上に立つ才を持っている。あの笑顔の裏で、いくつもの謀を計略しているタイプにみえる。

相手側の気持ちもあるが、どちらかが婚約者に相応しいのだろうと、頭でわかっていても、心がついてこない。

忘れることのできない思い出…
既に愛する人がいても…

政略結婚とはいえ、こんな気持ちのままで、婚約者を選んでいいのだろうか?

恋する気持ちはなくても、尊敬できる相手となら、添い遂げられると思っていた。

理玖に再び出会ってしまった今、愛のない結婚で幸せになれるのだろうかと…

理玖を思いながら、好きでもない男性に抱かれることができるのだろうか?

「わからない」

「そうか、わからぬか。難儀よの…まぁ、それも一興。まだ顔合わせの段階じゃ。奴らと順に、会ってみたらよい。明日には、早速、誰かからの誘いがあるじゃろう」

ワハハハと高笑いの祖父とは対象に、私の気持ちは下がっていく。

「さて、わしは飲んでくるかな」

「お爺さま、お酒は…」

お医者様から、お酒を控えるようにと言われている。

「祝い酒じゃぞ。めくじら立てるでない」

「それでも、体に良くないわよ」
< 70 / 168 >

この作品をシェア

pagetop