夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
碓氷 千秋さま
本筋ではない親戚筋からのあの若さで、千堂製薬の常務までなった方だ。浅愚ではないだろう。慧眼と先見の明を持ち、それに上に立つ才を持っている。あの笑顔の裏で、いくつもの謀を計略しているタイプにみえる。
相手側の気持ちもあるが、どちらかが婚約者に相応しいのだろうと、頭でわかっていても、心がついてこない。
忘れることのできない思い出…
既に愛する人がいても…
政略結婚とはいえ、こんな気持ちのままで、婚約者を選んでいいのだろうか?
恋する気持ちはなくても、尊敬できる相手となら、添い遂げられると思っていた。
理玖に再び出会ってしまった今、愛のない結婚で幸せになれるのだろうかと…
理玖を思いながら、好きでもない男性に抱かれることができるのだろうか?
「わからない」
「そうか、わからぬか。難儀よの…まぁ、それも一興。まだ顔合わせの段階じゃ。奴らと順に、会ってみたらよい。明日には、早速、誰かからの誘いがあるじゃろう」
ワハハハと高笑いの祖父とは対象に、私の気持ちは下がっていく。
「さて、わしは飲んでくるかな」
「お爺さま、お酒は…」
お医者様から、お酒を控えるようにと言われている。
「祝い酒じゃぞ。めくじら立てるでない」
「それでも、体に良くないわよ」