夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「うるさいの…お前は、部屋に戻っておれ。倉本ついてこい」
側に控えていたお付きの倉本さんが、私に目礼し、お任せくださいと頷き、VIP専用ラウンジに向かう祖父の後について行った。
一人残された私は、祖父に嘘をつかずにすんだと安堵してる。
足が向かう先は、上層階に上がるエレベーター。
「亜梨沙さん」
「東海林さま…どうされましたか?」
私が今いる階は、スイートルームなどがある高層階へ上がる為に、別のエレベーターに乗り換えるフロアだ。
まぁ、高層階に部屋を取っていれば、いても不思議ではないけど…追いかけてきたのではと勘ぐってしまうのは、彼の足取りが急いで向かって来ていたからだ。
「あなたと、将来について語りたいと話したではないですか…」
『君は、まだ一経営者でしかない。今日は、挨拶のみじゃ』と、お爺さまに身の程を弁えろと遠回しに言われてませんでした⁈
通じてなかったのだろうか?
上流階級の会話の裏読みは、難しくて、たまにこういう勘違いが出てくるのだろう。
「…そうお聞きしましたが、いずれ機会があった時にお話しさせてください」
「その機会とは、いつになるのですか?」
「…」
下手な事を言ったら面倒になりそうで、どうしようかと言葉を詰まらせてしまう。