夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
「知っているんですよ。今日の本来の目的のことを。
久世の跡継ぎである、あなたの婿選びなのでしょう!勅使川原、篠原、碓氷、千堂 そして私だ。あなたは、誰を選ぶのでしょうか?」
「…婿選びなんてしていません」
距離を縮めてくるこの男は、危険だと身を固くした。
「誤魔化さないでください。私は、あなたに一目惚れしたんです。どうか私を知る機会を作ってください。私を知れば、久世の当主に相応しいと思えるはずです」
「いえ、本当にあなたの勘違いです」
私の手首を掴み、表情を鬼のように豹変させた。
「痛い」
同じ初対面でも千秋さまとは違い、あなたには嫌悪感があるとは言えず、一目惚れと言われても、理玖の時のように嬉しく感じない。
どうしたらいい?
東海林さまを突き飛ばす勢いで、間に、背の高い男性が割り込んだ。
「大丈夫か?」
聞き覚えのある声に見上げれば、やはり…
理玖…と声にならない声でつぶやいた。
「今、こいつに何をしてた?」
「な、なにもしていない」
「その手はなんだ?なにもしてないってふうには見えないが…」
理玖の眼力に、動揺した東海林さまは、掴んでいた私の手を離していた。
「行くぞ」と、手を握られ早足で歩くので、草履が脱げないようについて行くのが精一杯で、抗議の声をあげる余裕もない。