夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
目が合い、私に向けてにこりと笑った後、父に「明日、改めてご挨拶に伺います」と、頭を下げて帰っていった。
ここまでが理玖の計画だったのだろうか?、果たして、これは成功したのだろうか?と、父を見たが、無表情からは、何も読み取れなかった。
祖父は、顎をさすり「亜梨沙、お前も気を引き締めて行動せねば足元を掬われるぞ」
「はい」
なぜそう言うのかわからないまま、返事を返した私は、今回の重大さを理解していなかったのだった。
その後もご挨拶は続き、最後の一人が残った。
碓氷 千秋様だった。
「御前、私は亜梨沙さんの婚約者候補に立候補いたします」
突然の立候補に目を見開き固まった私。
「千秋よ。わかっておるか?『二兎追うものは一兎をも得ず』じゃぞ。わしは、そちには欲を出して欲しくないと思っておる。がっかりさせるな」
欲を出して同時に二つのことをうまくやろうとすると、結局は、どちらもうまくいかないという意味だったはずと思いながら、千秋様を見ていた。
「己の分は弁えてますよ。ですが、欲しいものを手に入れたいと思うのは、私も一緒です。最後に笑うのは誰かなんて今はわからないでしょう!悔いのないよう手を尽くすだけですよ、亜梨沙さん、先ほどのお約束お忘れなきよう。近々、必ずご連絡させて頂きます」