夏の終わり〜かりそめの恋人が、再会したら全力で迫ってきました
会場内での約束だと思い出し、困った私は祖父を見た。だが、匙を投げたように「好きにしろ」というだけだった。
この場で断る理由が探せず、「お待ちしております」と返すしかなかった。
心の中で、(理玖が怒るだろうな)と思いながら。
翌日、昨夜の発言通りに理玖は朝からやってきた。
だが、どこか焦った様子で手にはキャリーケースを持っている。
「玄関でのご挨拶、大変遺憾ですが、時間もあまりなくこちらで失礼させて頂きます」
祖父と父と私、そして少し下がった場所で母が対面している。
「昨夜は、皆さまにご挨拶もなくあのような場で亜梨沙さんとの恋人宣言、ご心中とても戸惑われたことと思います。ですが、私の亜梨沙さんへの思いを理解して頂きたいと焦るあまり、私の浅はかな行動は御前の察しられたとおり、身に返ってきました。ですが、乗り越えてみせます。その時はどうか、亜梨沙さんとの交際を認めてください」
「理玖君、私が昨夜君に言った言葉は覚えているだろうか?」
「はい、もちろんです」
「そうか。今、置かれた現状は試練だろう。今は認めることはできないが、2人の仲は黙認しよう。乗り越えた時、公に認めることを公開すると約束するよ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げた理玖に父は苦笑していた。