シングルマザー・イン・NYC
アレックスから話を聞いた時には「まだずっと先」と思っていた結婚式は、あっという間にやって来た。
年を取ると月日の経つのが早くなるというが、本当にそうだ。
ケイ・タカヤナギのニューヨーク支店オープンスタッフとして渡米したのが、二十五歳。
二十七歳で篠田さんに出会い、二十九歳で慧を産んだ。
そして今、私は三十一歳で、慧は二歳になったばかり。
十月末、街のいたるところで樹々が色づいている。
黄色、オレンジ、赤紫、少し残っている黄緑――日中と夜間の寒暖差が大きいこの地方では、紅葉がとても鮮やかで美しい。
「ママ―、クルマ、きた!」
午後四時過ぎ。
アパートの階段を、私の手を引いて慧が降りる。
停まっているのはしっかりと磨かれたリムジンで、私たちと同じく、アレックスの結婚式に招待されたカミーユさんご夫妻のもの。
結婚式場はウェイブ・ヒルという、マンハッタンを地下鉄で一時間ほど北に行ったところなので、車に同乗させてくれることになったのだ。