シングルマザー・イン・NYC
運転手がドアを開けてくれ、私たちが乗り込むと、

「おはよう、キワ、ケイ。二人とも、素敵だよ」

カミーユさんの夫のデイビッドさんが早速褒めてくれた。

「そのドレス、とても似合ってるわ。ケイも小さな紳士ね!」

私は紫色のベルベッドのワンピースに、アメジストのネックレス。
慧は三つ揃えのスーツに蝶ネクタイだ。

「キワ、新しいルームメイトはどう?」

車が発信すると、カミーユがさんがきいてきた。

七月、アレックスがジェイドと暮らす新居に引っ越したのと入れ替わりに、私は新しいルームメイトを迎えたのだ。そうしないと、家賃がまかなえないからだ。

「いい感じです。とても明るい人で、たまにケーキを焼いてくれるんですよ」

夏木(なつき)里香(りか)――ルームメイトの名前だ――は、日系のケーキショップでパティシエを務めて三年目。

いずれ自分の店を持ちたいと、時間があるときにオリジナルレシピを開発中だ。
この間焼いてくれたリンゴのタルトは、甘酸っぱくバターが濃厚で、絶妙なバランスだった。
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