シングルマザー・イン・NYC

文面から察するに、完全に仕事の話だけというよりは、プライベートでも友好的な関係を築きたい、その前に、俺がどの程度の人間なのかを見抜きたい、という意図が透けて見えた。

カミーユ夫人と希和との関係があるとはいえ、俺が希和と別れたことは知っているだろう。

それなのに、たった二度会ったことがあるだけの俺を夕食に招待とは、デイビッド・ローゼンタールの器の大きさを感じる。

既に政財界で確固たる地位を築いているにもかかわらず、フットワーク軽く、自分が興味を持った人物とは積極的に交流する機会を持ち、必要とあらばサポートを提供する――デイビット・ローゼンタールは長年そうやって、周囲に信頼できる人間を集めてきた。

政治も結局は人間関係や信頼関係に左右されるところが大きいので、彼のやり方は理にかなっている。

それにしても、俺は政治家としてはまだ駆け出しだ。
俺の話す内容がデイビッドの興味を惹くだろうか。

案外、今夜の食事会で「こいつだめだな」と、見切りを付けられたりするのかもしれない。
< 123 / 251 >

この作品をシェア

pagetop