シングルマザー・イン・NYC
「あの時、赤ちゃんだったあの子は、もう二歳くらいか」

JFK空港まであとわずか。

飛行機の窓からマンハッタンを見下ろしながら、満開の桜の下を歩く希和とアレックスの笑顔を思い出した。

まさかもう会うことはないだろう。

だが、希和の近況くらいはわかるかもしれない――そう思ったのは、デイビッド・ローゼンタールからディナーの招待を受けていたからだ。

デイビッド・ローゼンタール氏は、後に希和の顧客となったカミーユ・ローゼンタールの夫で、米政財界の大物だ。


「Dear イツキ・シノダ

ニューヨークに視察に来るんだって? 
君の伯父さんから聞いたよ。
あの時出会った青年が、J党党首の甥っ子だったとは。世界は意外に狭いものだね。
もし良ければ、ディナーを一緒にどうだい? 
今後の日米関係について、弁護士出身の若手政治家である君の意見をぜひ聞いてみたい。

デイビッド・ローゼンタール」
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