シングルマザー・イン・NYC
ふと、左隣の家に視線を向けると、大きな出窓があり、そこには、濃いオレンジや黄色を中心にした、秋らしい花々が活けられていた。
カーテン越しに人の気配がするが、中は見えない。
夫人――いや、料理人を雇っているかもしれない――が食事の準備でもしているのだろうか。
『はい』
少しして、インターフォンからデイビッド氏の声がした。
「篠田です」
『待っていたよ、よく来てくれたね。今ロックを解除するから――』
カチャリ、と音がする。
そしてドアが開けられ、笑顔のローゼンタール夫妻と――カミーユ夫人に抱っこされた愛らしい孫……とは思えないな、どう見てもアジア人の子供だ――がそこいた。