シングルマザー・イン・NYC
「お招きいただき、ありがとうございます。これ、お土産です」
俺が持参したのは日本酒で、コーシャ認定を取得しているものだ。
ローゼンタール夫妻はユダヤ系で、そうなると、ユダヤ教の戒律を守って暮らしている可能性がある。
コーシャとは、ユダヤ教の食に関する規定で、色々と食べてはいけない食物があり、食品関係のお土産は気を付けないといけない。
「まあ、日本酒! しかもコーシャ認定されたもの。とても嬉しいわ。ねえ、あなた」
「ああ」
「いいね、にほんちゅ!」
場の雰囲気がほぐれたのに反応したのだろう、夫人に抱っこされた男の子がかわいい声で言った。
「ふふ、ケイも喜んでるわ」
「ほんとだな」
ケイというのか。
一体二人とどういう関係なのだろう。
俺の気持ちを察したのだろう、デイビッドが言った。
「ああ、紹介がまだだったね。すまない。この子はケイ。キワの息子だよ」
「希和の?」
希和の息子がなんでまたここに?