シングルマザー・イン・NYC
ソファに座った俺にケイが持ってきたのは、『すてきな三にんぐみ』、英語版と日本語版の二冊。

「どっちを読む?」

「おじさん、にほんじん?」

「うん」

「じゃ、にほんご」

――それにしても、奇妙だ。

希和の息子に絵本を読んでやることになるとは。

ケイは『すてきな三にんぐみ』がよほどお気に入りと見えて、文章はすべて暗記していた。
だから、二人で一緒に声を揃えて読む。

この子はとても賢そうだ。

腕時計を見ると、六時五十五分。
あと少ししたら、希和がこの子を迎えに来るな。

そう思った時、玄関の呼び鈴が鳴った。
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