シングルマザー・イン・NYC
「そろそろチキン、焼けたかしら」
カミーユ夫人は、先ほどからいい匂いを漂わせているオーブンの中を開け、中を覗き込んだ。
「うん、いい感じ」
「私たちはこれから食卓の準備をするから、イツキ、ケイの面倒を見ていてくれる? 一階の入り口そばのソファにケイの荷物があって、そこにお気に入りの絵本が入っているから。読んであげて」
ケイは俺の膝から降りると、幼いながらもしっかりした足取りで、階段に向かって歩き出す。
そして、片手に手すり、片手に俺の出を握ると、一段一段、ゆっくり慎重に一階へと昇って行った。