シングルマザー・イン・NYC

店内の心地よい喧騒に包まれ、おいしい食事でお腹が満たされていくにつれ、私の心は少し落ち着いてきた。

「それにしてもカミーユさん、大胆なことしましたね」

私に秘密で、篠田さんと慧を会わせるだなんて。

さっき聞いた時は腹が立ったが、今ではなんだかおかしく思えてくるから不思議だ。

「そうよね」

カミーユさんも楽しそうに笑う。

「イツキの婚約が正式に破談になった、という情報は入ってきていたの。それで、多分キワのことを忘れられないんだろうなと思って」

「――そうでしょうか」

じゃあなぜ、ずっと連絡してこなかったの?

「絶対にとは言い切れないけど。でも、いまだに独身でしょう? 相当あなたとの別れがこたえたのはたしかだと思うけど。キワ、誤解しないで聞いて頂戴ね」

「――はい」

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