シングルマザー・イン・NYC
「あなたが一人でケイを産むと教えてくれた時に伝えたけど、度胸あるな、と思った。だからこれまで応援してきたわ。でも、イツキと別れた理由って、慧の存在をずっと彼に隠し通すほどのことなのかな、という気持ちもあるの」
「彼は、日本にいる婚約者とちゃんと別れていなかったのに、私と付き合っていました。そしてプロポーズまで」
「そうね、たしかにそうなんでしょう。でも、物事はいつもすべてが完璧に進むとは限らないわ。たまたまタイミングが悪くてそうなってしまった、ということもあるでしょう」
「でも――」
カミーユさんはテーブルに置いていた右手を少し上げて、反論しようとする私を制した。
「あなたは今までとても頑張ってきた。立派よ。でもイツキも、あなたと別れてから彼なりに誠実に生きてきたんだと思うの。そして慧には父親が必要。もし一緒に暮らせなくても、せめて、お互いの存在はきちんと認識させてあげた方がいい。ねえ、キワ。イツキともう一度、会ってみることはできない?」