シングルマザー・イン・NYC
リビングから廊下に出て、慧の部屋をのぞく。
ベッドから毛布がずり落ちていたので、そっとかけ直してやる。

隣の自室のドアを開けると、窓――天井が高く、上の方の窓には脚立に上らないと手が届かない――から青白い月明かりが入り、ベッドを照らしていた。

私は、ベッドにどさっと倒れこんだ。

今日は疲れた。

朝、慧と篠田さんが会ったことがあると知って驚き、カミーユさんとランチして大胆な計画を聞かされ、美術館でカクテル飲んでホテルに電話して、篠田さんからの連絡を待ち続けて。

大臣だもの、忙しいよね――シャワーを浴びるくらいまでは、そう思っていた。
だがもう深夜だ。時計は十二時を回っている。

篠田さんは、私に連絡を取る気はないのかもしれない。
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