シングルマザー・イン・NYC
もう眠ろう――だがブランケットの中にもぐりこんだ直後、ベッドサイドのテーブルに置いたスマホが鳴った。

知らない番号。
篠田さんだ。


「――はい」

『……希和?』

数秒の沈黙の後聞こえてきたのは、懐かしい声。
私は体を起こした。

『眠ってた? ごめん、こんな時間に。打ち合わせが押して――』

早口でそれだけ言うと、篠田さんは、また黙った。

会いたい、と伝えなくては。
でも、うまく言葉が出ない。

『――希和?』

「篠田さん。私こそごめんなさい。突然メッセージを残したりして。驚かせたでしょ?」

自分の声が震えているのがわかる。

『ああ、とても――元気だった?』

「うん。篠田さんは?」

『元気。でもずっと忙しかった』

「そうだよね。すごいね、政治家になって、大臣にまで」

『いや、それほどでも。大臣に関してはたまたまポストが空いていた感じで――』

篠田さんの声に、少し照れたような笑いが混じる。
それを聞いたらほっとして、私は思い切って言った。

「話したいことがあるの」


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