シングルマザー・イン・NYC
『何?』
「電話じゃなくて、会って話したいの。プラヤホテルのカミーユさんたちの部屋を使っていいって。あそこなら、人目に付かないで会えるでしょう。少しの時間で大丈夫だから」
『……』
「篠田さん?」
『希和、アレックスとはうまくやってる?』
「アレックス? うん、変わりないよ。いい感じ」
サロンの共同店長として、これ以上ないパートナーだ。
『それなら、会わない方がいいと思う』
はっきりとした口調。
「会わない方が……いい?」
断られる可能性も考えてはいたが、いざそうなってみるとショックは大きい。
「どうして?」
『――俺たちはもう別れたんだし、軽率なことはしない方がいい。何か困ってるんだったら話は聞くから――何があった? なぜ急に連絡を?』
たしかに、もし篠田さんの周囲の人に知られれば、軽率と思われても仕方がない行動だろう。
そして「会わない方がいい」と言ったのにもかかわらず、私の心配をしてくれている。