シングルマザー・イン・NYC
博物館に着いた後も、みんな、大はしゃぎだった。
クラスは二十五名。
白人や黒人はもちろん、慧のようなアジア系、ヒスパニック……と、肌や髪の色が見事にばらばら。体格も違う。
担任の先生、そして個性豊かな子供たちの集団の少し後ろを、シャペロンの大人五人が見守りながら館内を巡る。
恐竜の部屋ではさらに盛り上がり、宝石と鉱物のホールでは、なぜだか神妙な面持ちに。
長さ二十九メートルのシロナガスクジラが浮かぶホールに入った時は、子供も大人も、天井を見上げてため息をついた。
楽しかった半日。
「また来たいね」
「うん」
「何回も来てるけど、みんなで来ると、すっごく楽しいね」
ランチルームでそれぞれが持参したお弁当を食べながら、子供たちはとても満足げな様子だった。
博物館を出ると、人と車がにぎやかに行き交っていた。
「帰るのは残念だけど、バスは楽しみ」
「そうだね」
「ブラちゃんも楽しかったって」
「それは良かった」
ずっと右手に持ったままだったな。
私たちが駐車場に向かおうとした時だった。
辺りが少しざわつき、人々の視線が道路の向こうに注がれた。
ニューヨーク歴史協会の前に黒塗りの車が数台停まり、スーツを着た男性が数名、降りたところだった。
全員アジア系で、報道関係者だろうか――カメラを携えた人々もおり、忙しないというか、物々しい雰囲気だ。
そのうちの一人がこちらを振り返る。
はっと息をのんだ
篠田さん。