シングルマザー・イン・NYC
「これ、ありがとう。僕、ずっと持ってたよ」

「こちらこそ、ありがとう。慧、おいで」

慧の手が私の手から離れる。

ベッドの傍らに立った慧に、篠田さんは何かを耳打ちした。
こうして顔を寄せ合うと、二人は本当によく似ている。

少し不安そうだった慧の表情が笑顔へと変わった。

「――いいよ。僕もずっと、そうなればいいなって、思ってたから」

「本当に?」

篠田さんも嬉しそうだ。

「うん。だから忘れずにいたんだよ」

「そうか。――希和」

篠田さんが私を見つめた。

「何?」

「結婚しよう」

え? 今ここで?

そう思ったのはほんの一瞬で。

「はい」

私は躊躇なく答えた。
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