シングルマザー・イン・NYC
ここに来る直前まで、迷っていた。
慧と一緒に来るのは、もう少し時間をおいてからの方が良いのでは、と。

けれど昨夜、篠田さんは「――明日また来て。慧を連れて。会いたい」と言った。
それに慧は、篠田さんを追いかけて車道に飛び出した。

だから、思い切って会わせてみることにしたのだ。

どのくらい沈黙が続いただろう。
やがて、篠田さんが口を開いた。

「久しぶり、慧」

「うん。久しぶり」

「覚えていてくれて、嬉しかった」

「あの時、楽しかったし。あと、ブラちゃんのお礼、言いたかったんだ」

慧はリュックからぬいぐるみを取り出した。
事故の衝撃でブラちゃんは弾き飛ばされ、そのおかげで、きれいなままだ。
< 193 / 251 >

この作品をシェア

pagetop