シングルマザー・イン・NYC
「中学の頃、父母が離婚して。それからは母が育ててくれました。中学校の教師」

両親の話は、信頼している人にしかしない。

それでも緊張する。

同情されたりなぐさめられたり、変に気を遣われたり。
どれも私は好きじゃない。

でも篠田さんは、表情を変えず淡々と言った。

「そう。お母さん、ご苦労されたんだな」

「はい」

「離れ離れで寂しくない? 希和、帰国は?」

「そうですね……まだわからないです。母をこっちに呼び寄せるかも」

今のお店で、私はそれなりのポジションと収入を得ている。
この先、頑張り次第ではもっと成功することも可能だ。

しばらくするとほとんどの座席が埋まり、会場のライトが落ちた。

演目は「カルメン」。
初心者にはもってこいの、有名な曲が多く含まれているオペラだ。
< 34 / 251 >

この作品をシェア

pagetop