シングルマザー・イン・NYC
新しい年になった。

ニューヨークの年末年始は、大晦日はカウントダウンで盛り上がるけど、二日からはまったくの平日に戻る。

篠田さんも私も帰国せず、年明け早々、忙しい日々を過ごしていた。

どちらかの休前日には篠田さんの部屋で過ごすのが習慣になり、その日――二月に入ったばかりだったと思う――も、私は篠田さんの部屋にいた。

夜の十時ごろだったろうか、珍しく篠田さんの携帯が鳴った。

「――父さん。久しぶり。うん、元気にしてるよ。父さんは?」

電話の相手はお父さんか。

だが楽しい父子の会話が始まるかと思いきや、篠田さんの顔が曇った。

「――それ、本当に?」

篠田さんは携帯を手にしたまま、机の上のノートパソコンを立ち上げた。
携帯を肩と耳で挟み、器用にキーボードを叩く。
そして。

「――」

篠田さんはキーボードから手を離し、右手で口元を抑えた。
そして、少しの間の後で言った。

「本気だよ。結婚する」

(私の話?)

気になり、ノートパソコンの画面を後ろからのぞいた。

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