シングルマザー・イン・NYC
その夜、私たちは深く深く、求めあった。
こんなに満ち足りた気持ちになったことは、初めてだ。

二人ともぐっすり眠り、私は寝坊して危うく仕事に遅刻するところだった。

急いで身支度を整えると、篠田さんは私と一緒に外に出て、タクシーを止めてくれた。

「ごめん、寝不足だよね。今日の仕事、大丈夫?」

「うん。これくらい平気」

「そうか。無理するなよ」

そう言って、篠田さんは笑った。

「なに?」

「いや、結婚したらこういうのが日常になるのかなって」

「……遅刻は困る。朝は余裕をもって仕事に行くよ、私は」

また篠田さんが笑った。

「いってらっしゃい。俺の部屋には、来たくなったらいつでもきて。連絡もいらないから」

慌ただしいけど、幸せな朝。

タクシーの窓を通り過ぎるニューヨークの風景が、たまらなく愛おしく見えた。
< 46 / 251 >

この作品をシェア

pagetop