シングルマザー・イン・NYC
部屋にやって来た篠田さんは、少し青ざめて見えた。
外が寒かったからだろうか。
「コーヒー、飲む?」
なんとなく距離を取りたくて、私はきいた。
そして私の気持ちを察してか、篠田さんは答える。
「……うん。ありがとう」
夜間に水を汲み、ガスレンジの火をつける。
薄暗いキッチン。真っ白なケトルの下からのぞく青白い炎はきれいだ。
コーヒー豆をひいて、カップを二つ用意して、やがて沸いたお湯を、豆をふくらませるようにゆっくりと注いでいく。
いつもだったら、幸せな朝の飲み物だ。
でも今は――。
ソファに座る篠田さんの前のローテーブルに、たっぷりのコーヒーを淹れたマグカップを置いた。
ことり、と音がした。
自分の分は手に持ったまま、私は篠田さんと少し間を開けてソファに座った。
「今日、葵が美容室に行ったって聞いて。急に申し訳なかった。あいつのことだから、希和が嫌な思いをするようなことを言ったんじゃないかと――」
「うん、言ったよ。篠田さんの婚約者だって」
「ごめん」
篠田さんは悲痛な表情をした。
ごめん――か。私は黙ってコーヒーを一口飲んだ。
外が寒かったからだろうか。
「コーヒー、飲む?」
なんとなく距離を取りたくて、私はきいた。
そして私の気持ちを察してか、篠田さんは答える。
「……うん。ありがとう」
夜間に水を汲み、ガスレンジの火をつける。
薄暗いキッチン。真っ白なケトルの下からのぞく青白い炎はきれいだ。
コーヒー豆をひいて、カップを二つ用意して、やがて沸いたお湯を、豆をふくらませるようにゆっくりと注いでいく。
いつもだったら、幸せな朝の飲み物だ。
でも今は――。
ソファに座る篠田さんの前のローテーブルに、たっぷりのコーヒーを淹れたマグカップを置いた。
ことり、と音がした。
自分の分は手に持ったまま、私は篠田さんと少し間を開けてソファに座った。
「今日、葵が美容室に行ったって聞いて。急に申し訳なかった。あいつのことだから、希和が嫌な思いをするようなことを言ったんじゃないかと――」
「うん、言ったよ。篠田さんの婚約者だって」
「ごめん」
篠田さんは悲痛な表情をした。
ごめん――か。私は黙ってコーヒーを一口飲んだ。