シングルマザー・イン・NYC
「私、そういうの、だめなの。葵さんときちんと別れてから、付き合って欲しかった」

「それは申し訳ないと思ってる。でももう別れたし、愛してる。許してくれないか。希和と知り合ってからは、葵と会っていないんだ。いや、正確に言えば、昨日会ったけど。俺が愛してるのは希和なんだ。ずっと一緒にいたい」

「……」

私は自室に行くとメイク台の引き出しを開け、指輪の箱を取り出しふたを開けた。

篠田さんからもらった婚約指輪だ。
ダイヤの輝きに、あの幸せなプロポーズの瞬間が重なる。

涙で視界がぼやける。

でもだめだ。
私は鼻をすすって、涙をティッシュで拭いた。

指輪のふたを閉めると、パタン、と柔らかな音がした。

まるで「これで二人の関係は終わり」とでも告げるように。

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