シングルマザー・イン・NYC
リビングに戻り、テーブルの上に指輪の箱を置く。

まさか、という表情で篠田さんが私を見上げた。
私はすうっと息を吸って、告げた。

「篠田さん、ごめんね」

今は許せてもきっと将来、私は篠田さんを疑う日が来る気がする。

潔癖すぎる、と自分でも思う。

だが忘れられないのだ、父に裏切られ苦しんでいた母の姿を。

「希和は、女性に誠実な男性を選びなさいね。少しでも不誠実なところのある人は、だめよ」

と、何度も言われたことを。

今ならまだ引き返せる。

すごく好きだけど。
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