シングルマザー・イン・NYC
「まあ、疲れていないと言っては嘘になりますが――でも、日本では事務所から数日出られないこともありますし。慣れています」

若い弁護士は猛烈に働かされる。
案件が立て込んでくると、徹夜はもちろん、数日自宅に帰れないこともある。

「そろそろ日本の事務所に久我(というのは、俺のボス的存在の弁護士だ)が出勤する時間です。電話で状況を報告して、最終的な結論を相談させてください。少し、席を外しても?」

「ええ。もちろん。隣の会議室をお使いください」

俺は部屋を出て、久我先生に電話をかけた。

『おぅ、篠田。案件、押してるって?』

「もうメール読んでくださったんですね、ありがとうございます。それで、大体の落としどころを考えたんですが、いかがですか? 今、クライアントとの議論をまとめたファイルを送ります」

デスクに置いたノートPCを操作した。

『10分経ったらかけ直す。しばらくそこにろ』

「わかりました」
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